ライトノベリスト、ヘビーノベリスト

二次創作とSSを書くブログだったんですが最近は……。ライトノベルを読む!読むの遅いのなんとかしたい!

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ハチクジロマンチスト2


  その後、八九寺と数時間に渡り全力でボケとつっこみと格闘。僕はその間に八九寺を3度ほど気絶させることに成功した。ハットトリックである。夕方になったので別れ、僕は忍野のいた学習塾へ向かうことにする。夕暮れは夜の訪れを予感させた。
「あれ、阿良々木くんじゃないか。奇遇だね。ちょうど今帰ってきたばかりだよ」
 八九寺の言葉通り忍野はいた。机を繋げて寝転がっている。
「阿良々木くんだし、このままでいいか」
「別にいいけど……」
 こいつ、ダメな人間になっている気がする。
「忍野、頼みがあるんだけど」
「なに? 阿良々木くんの頼みなら聞いてあげよう」
 僕は意を決する。それは決意!
「八九「興味はあるけどそれは無理!」」
 僕の決意瞬殺っ!
 お前、絶対僕たちの会話を聞いてただろ! さっき帰ってきたっていうのはそういうことなんだな! そして前言撤回が早すぎるぞ!
「じゃあお前何のために帰ってきたんだよ! 妄想を叶える救世主になるべくして帰って来たんじゃないのか!」
「僕がいつ帰ってこようが僕の自由でしょ。阿良々木くんにそれを意味づけされる覚えはないね」
 正論すぎるっ……。ははぁ、申し訳ありませんでした。
「ここは僕の家だしね」
 それは違うと思う。
「でもお土産くらいは持って帰ってこないとな、と思ってちゃんと持ってきたんだよ」
「お、お土産?」
 つい期待してしまう。忍野のお土産ってなんだか凄そうだし。変な仮面とか木彫りの何かとかだったら扱いに困ってしまうが。忍野は眠たそうにズボンのポケットを探る。ポケットから取り出すということは結構小さな物のようだ。しかしポケットからは何も取り出さず、バッと起きあがってアロハシャツの胸ポケットを探る。やがてキョロキョロし始める。ん?
「あれ、ない!」
「ええ!?」
「なんてね。面白いなぁ阿良々木くんは」
「からかわれたっ!」
 しかし迫真の演技だったぞ。忍野の性格を侮っていた。
「お土産お土産っと」
 忍野はポケットからおもむろに紙を出した。
「?」
 そしてそのまま鼻をかんだ。
「お土産じゃないのかよ!」
「やっぱり面白いなぁ阿良々木くん」
 もはや弄ばれている。だんだん悲しくなってくる。
「はいこれ」
 忍野が改めてポケットから出し、渡してきたのはくしゃくしゃになった紙切れだった。畳んですらないのが悲しい。鼻かんだやつじゃないだろうな……。住所らしきものが書かれているみたいだけど、なんだこれは。
「お土産ってこれ?」
 ちり紙の間違いじゃないだろうか。というかさっきのことを思い出すとあまり触りたくないな……。
「それ」
「この住所は?」
「迷子ちゃんの母親の住所」
「え!?」
 てっきり僕は八九寺の母親も死んだように思っていた。
「八九寺の母親って、生きていたのか」
 忍野は頷いて肯定し、話し出す。
「阿良々木くん、君は以前、迷子ちゃんの住んでいた場所を見つけたね。それはいいことだ」
 僕は八九寺を道案内したことを思い出す。あのときは戦場ヶ原に助けてもらった。区画整理の影響で更地になってはいたが、八九寺の住んでいた場所を見つけ、八九寺は家に帰った。
「それで、君は終ったと思う?」
「何がだ?」
「迷子ちゃんの件についてさ」
「その言いぶりだと、終わっていないってことか」
「その通り。根本的な解決にはなっていない。わかるかな? 原点に回帰しようか。そもそも迷子ちゃんの目的は……」
 そうだ。あのとき八九寺は何と言っていたか。彼女は母親に会いたいと、そう願っていたのではなかったか? それにも関わらず、僕は八九寺の住んでいた場所だけを見つけて満足し、八九寺はさも願いを叶えたかのように思っていたのだ。本当のところでは叶っていないのに。
 忍野は僕を畳みかけるように続ける。
「それに阿良々木くん、迷子ちゃんの一番の特徴であるリュックサックだよ。どうして迷子ちゃんは大きなリュックサックをいまだに背負っているかわかるかい?」
「それは、八九寺はカタツムリの怪異だからその形を表しているんじゃ……」
 いや、違う。八九寺は

 母親に会うために、いまだに大きなリュックサックを背負っている

 母親に会う必要がなかったなら、あんな大きなリュックサックなんて背負うはずがないんだ。あれは、八九寺がまだ母親を捜しているという証拠。そうすれば時々街のどこかで見かける八九寺にも説明が付く。小学生の考えることだ、手当たり次第に家を捜しているのだろう。
 僕の中で記憶の欠片が結ばれてゆく。八九寺は母親探しを終えていたのではなかったのだ。今思えば僕はそれに今まで気付いてあげられなかった。そう気付くチャンスはいくらでもあったのだろう。八九寺は僕に助けを求めることもなく、誰にも助けを求めることもなく、たった1人で母親を捜していたのだ。
「そう自分を責めることはないよ。だいたい、君1人の力じゃ彼女の母親にまでたどり着けるとは思えないしね。だからこそ僕がその手助けをしたんだ。君は待っていれば良かったんだよ」
 忍野は怪異に関しては専門家だろうけれど、恐らく人探しなどは専門外だっただろう。その苦労が並大抵ではないことは僕にも予想できた。
「忍野…………ありがとうな」
「また同じことを言わせるつもりかい? 成長しないねぇ君は。いいかい、勝手に助かるだけなんだよ。僕がするのはその手助けだけ」
 今回のこれはお節介かもしれないけれどね、と付け加える。
「そうだったな。でも、ありがとう」
 僕はそう告げて忍野の前を去る。
 最高のお土産じゃないか、忍野。僕はしわしわの紙に目を落とす。書かれてある住所はそう遠くないようだ。さっそく明日にでも八九寺を連れて電車で行ってみよう。
 去り際に忍野から声をかけられる。
「ああ、阿良々木くん」
 危なく無視してしまいそうだった。
「なんだ? 忍野」
「一つ忠告しておこう。もっとも、君にとっては些末な問題かもしれないけどね」
 そうして忍野はどうも含みがある口調で言った。
「その紙を使おうが使うまいが君の自由だ。それは阿良々木くんに対するお土産だからね」
「それはどういうことだ?」
「選択の権利は君にあるってことさ。迷子ちゃんを母親に会わせるのも、会わせないのも、君次第」
 忍野は苦笑する。

「この世に残っている霊が、その願いを叶えてしまったらどうなるか――――考えるべきだと思うよ」


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