ライトノベリスト、ヘビーノベリスト

二次創作とSSを書くブログだったんですが最近は……。ライトノベルを読む!読むの遅いのなんとかしたい!

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オリジナルSS 『めっ!』 第十話

 お隣さんが引っ越して来た次の週。俺とメイドさんが買い物(もう視線には慣れた)を終えて帰ってくると部屋の様子がどこかおかしかった。
「メイドさん。鍵って確か変えたんだよね」
「変えました。そうですね。ピッキング対策はばっちりです」
 そのせいで幼なじみの機嫌がいまいち良くないのだが、それについては断じて自分に非はないことを宣言しておきたい。
「なんか部屋変だよね」
 そう、どこか出かける前とは様子が違う。空き巣に入られたっていう可能性はこのボロアパートだし、考えにくいのだが。
「そうですね……あえて言うならば」

「「ドアが増えてる」」

 犯行が大胆すぎるぞ! しかも犯人丸わかりだし!
 ドアは俺の部屋とお隣さんの部屋を繋ぐように壁に作られていた。
「どうなってんだこれ」
 ドアに近づいて確認しよう。いつのまに工事されたんだ……。
「どう考えても犯人は一人しか考えられないですね」
 がちゃ。と、音がして勢い良く開けられるドア。
 ゴッ。
「おかえりなさい。ダーリン」
「ぶふぉぁあ!」
 やはりというか出てきたのは隣人さんだった。俺はドアによって鼻が縮んだ。そうか、こっちに開くんだ……。
「その反応……ダ、ダーリン……そっちの言い方がいいのですか? ご主人様!?」
 メイドさんの反応はどこかずれている。
「それよりどうしてドアができたんだ……」
「そうです。ごーリンの許可もなくこんなことを!」
「ごーリンってなんだ!?」
「ご主人様とダーリンをハイブリットしました。これからよろしくお願いしますゴー☆リン」
「やめてっ! せめてどっちかにして!?」
「わかりました駄主人さま!」
「なんか的確に俺が説明されているような呼び方だけどそれもダメっ!」
 手で自分の鼻が無事であるか確認し、改めて状況を整理する。
「これはどういうことですか」
「あなたが一度外に出てわたしの部屋まで来られるのが大変だと思いましたので、ドアを用意したんですよ」
 なぜ俺がお隣さんの家に行くことが前提になっているんだろう……。
「邪魔です。今すぐ元に戻してください」
 メイドさんが俺の言いたいことをきっぱり言ってくれる。頼りになる。
「却下します。これは利便性を向上させるために設置したのですから、住民はそれに従ってください」
 大家権限発動キタコレ!
「あ、コレ鍵は掛かりませんからいつでも遊びに来てくださいね。それでは」
 そう言ってお隣さんはドアの向こうに消えていった。残った俺とメイドさん呆然……。
「どうしましょう。ご主人様……」
 このままお隣さんに自由に出入りされてはプライバシーもなにもない。なんとかこの扉を無力化しなければなるまい。
「ドアを家具で塞ぐか」
「それです! さっそく運んじゃいましょう」
 そうしてメイドさんがタンスを持ち上げて移動させた。なんて行動の早さ。そして力強すぎ。
「完璧です。これでもう大丈夫」
 待て、それは大丈夫じゃないフラg……
『甘いですね』
 !? ガタガタとドアを揺さぶるお隣さん。怖すぎる。やばいやばいと俺とメイドさんはタンスを押した。
『そんなことでわたしの愛の手から逃れられると思っているんですか?』
 愛が重すぎるよ……!
「このヤンデレ大家! ご主人様にまとわりつくのは止めなさい!」
 おお、今日ほどメイドさんを頼りになると思ったことはない。
「ご主人様はわたしだけのおもちゃなんです!」
 こいつもダメだったぁあああ。
『ならあなたにも差し上げます。腕一本でどうですか? 足が欲しいなら考えますよ』
 ナにを言ッテいるのかナ? 誰の腕だとか足だとかそういうことは深く考えないことにしようそうしよう。って無理だああああ絶対俺のパーツだろそれぇええええ!?
「わたしの腕や足でよければあげます。だからご主人様だけは見逃して下さい!」
 やだ、かっこいい……。
「メイドさん……」
 俺は感動で泣きそうだった。
「ご主人様……あなたはわたしが守ります!」
 彼女の優しさに俺の心が震える。
「いいんだ、メイドさんが犠牲になることなんてな「だからご主人様のパーツ全てをわたしだけのものにします」」

 !?

 あれ、メイドVSヤンデレだったはずなのにいつの間にかヤンデレVSヤンデレになっているのは俺の気のせいだろうか……。どこにも生存フラグがないぞ!?
『いいでしょう。今日は収穫も……ありましたし……また次の……機会にしましょう……』
 台詞の合間にすーすーという音が聞こえる。
「収穫?」
 むむ、と、メイドさんがあたりをチェックして回る。なにか大家さんに盗まれただろうか。俺も探してみる。
「ご主人様……ご主人様の下着や服が全てありません!」
「なん……だと……」
「やつは恐らく盗んだ衣服を……くんかくんかしています!」
「へ、変態だぁああああ!!」
『ふふ……すぅ』
「やめろぉおおおおお!! 俺の中の何かが恥ずかしくて死ぬからやめろぉおおおおお!!」
 俺は畳をのたうち回った。今この瞬間俺の黒歴史が更新されている! ぐぉぉおおおおおお!
「その時黒歴史が動いた ~ご主人様のパンツ~ 」
「やめい!」
 俺が天井を見上げていると部屋の角にスピーカーが設置されていた。どうやらそこから声が聞こえているらしい。
「あのスピーカーを破壊しましょう。そうすれば恥ずかしくなくなるかもしれません」
 その場しのぎすぎる!
『あれ、わたしうっかり下着を置き忘れてきちゃいましたーー』明らかに棒声。
「なん……だと……」
 見るとテーブルの上にはブツがあった。しかも勝負。
『ちょうどいいので差し上げます』
「ご主人様、罠です。クロロホルムとかトリハロメタンとかナットウキナーゼとかなんか色々がしてアーモンド臭がするに違いありません!」
「だがなメイドさん。日本男児にはな、やらなければならない時があるんだよ」
「そのセリフでやることが下着の臭いかぎ!? 全ての日本男児に謝って下さい大至急!」
「ごめw」
「軽っ!!」
 メイドさんは怒り心頭のご様子。このままじゃ本当にバラされてしまいそうだったので、変態マインドを抑えつつ、対策を考えることにした。
「俺の服を返してもらおうか!」
『ならあなたの頭と交換してもいいですよ』
 ダメだこの人。もう交渉の余地なし。
「よし、その条件飲みます」
「飲むな!!」
 それしたら俺死んじゃうよ!
「大丈夫です。お爺さまにまた作ってもらえばいいじゃないですか」
「俺ロボットじゃないからね!? なにそのあたかも俺がクソジジイに作られたみたいな言い方!?」
「…………」
「黙らないで!? お願いだから黙らないで!?」
 メイドさんは遠い目をする。
「まだ、気付いておられなかったんですね……」
「やめろぉおお! 俺をロボ化するような話の流れに持っていこうとするのをやめろおおお!! 話のプロット適当だから本当にそうなっちゃうからやめてえええええ」
「よろしくお願いします……先輩」
「うわぁああああああああ!」
「10話だしちょうどいいじゃないですか!」
「qあwせdrftgyふじこlp;@:「」」
 もう俺のライフはゼロよ……。
 俺がorzしているとメイドさんが何か名案を思いついたように手を打った。
「ふっふっふ……」
「絶対悪い企みしてるよこの人!」
「いい案があります」
「その顔じゃ説得力ないからな!?」
 悪人顔だった。越後屋レベル。
「大丈夫です。絶対成功します。成功したら結婚してもいいくらいです」
「それ失敗フラグだからやめて!」
 彼女はそう言われて少しだけ残念そうな顔をした。
『すぅ』
「いやなんとしてでも成功させるんだぁああああ!!」
 このままでは悶死してしまう。なんとかしないと俺の精神が持たない。
「聞きなさいヤンデレ大家! 大人しくご主人様の衣服を返しなさい」
『お断りします』
「そうですか……」
 いい案終了のお知らせ。
「え? 終わり? 案はどこさいったんだ?」
「ご主人様落ち着いて下さいなまっちょります!」
「どげんかせんといかんがな!!」
「そげなこと言われても……」
 メイドさんは押入の方から何かを取り出した。
「それは……?」
「切り札ですよ。こんなときもあろうかと取っておきました」
 果たしてこんなときがどうして予想できるのか甚だ疑問だがいまはそれに頼ってみるしかない。
『これは渡しませんよ』
「もっといいもの、欲しくありませんか?」
『もっと……いいもの?』
 ゴクリ、と生唾を飲む音がスピーカーから流れる。これはうまく釣れてるぞ。
「それは、青春時代の憧れ」
「うん」
「それは、夢」
「うん」
「それは、黒歴史」
「うん?」
「あなたが欲しているものは、この、ご主人様のリコーダーではないのですか!?」
『乗った!』
「待ていぁあ!!」
 それじゃあ結局恥ずかしいことされるだろうがぁああああああ!!
「それはきっと、被害妄想」
「そうか、そうだよなぁ。考えすぎだよなぁ」
 そして俺は無事に服を取り戻し、考えるのをやめた。


おしまい








記念すべき10話! 1話書いたときより地の文減ってない!?wというか文章力落ちてる!?wwwもうやだww

ええ、今回もはっちゃけてます


ちなみに自分が認識している限りPCから1話など読む場合はリンクのケータイ版ライトノベリスト、ヘビーノベリストからカテゴリに行って戻ってもらわないと読めないという不便さww
カテゴリ1話ずつにすればいいのかな……模様替えも考えよう

今回は3500字くらいで短めです。前回の半分くらい。

話の内容としては前回の続きみたいな感じでいいかと。前回読んでないと多分よくわからないね。

要望とかあれば採用します! 感想あればコメよろしくです。


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オリジナルSS「めっ!」シリーズ | コメント:5 | トラックバック:0 |

オリジナルSS 『めっ!』 第九話 

 「メイドさんの得意料理はサンドウィッチである。彼女は当初サンドウィッチしか作ることができなかった。それもそのはずで何しろ開発者のクソジジイが料理なんてできるはずがないからである。そこでメイドさんは匠(母)に頼んで料理の修行に励んだ。彼女は俺の予想を裏切ってみるみる上達し、定番のメニューはもちろん中華、洋食、和食を持ち前の記憶力で修得した。俺はメイドさんの料理のあまりの出来の良さにもうメイドさんの料理以外食べることができなくなったのだ。メイドさんがいないともう俺は生きていくことができない。そう、なぜなら彼女の料理の美味しさは彼女の愛によるものだったからだ。嗚呼、メイドさん、俺はあなたに愛されてなんて幸せなんだろう……」
 ……そう言ってメイドさんが出したのはサンドウィッチだった。妄想乙である。
「で、サンドウィッチなのか……」
 はてさて、朝食にサンドウィッチは悪くはない。だが、もう数えるのを諦めるほどに朝食昼食夕食夜食にサンドウィッチが出る食卓はそうそうないと思う。
「あの、だな、メイドさん」
「はい、なんなりと」
 あくまで優雅を装うメイドさん。
「頼むからサンドウィッチ以外を作って下さいお願いします」
 年季の入った畳の上に土下座した。orzである。
「わかりました」
「おお」
「今度はBLTにします」
「……」
 俺は諦めた。
「そういえば幼なじみが今度料理作ってくれるって言ってたからメイドさんもご馳走になろうよ」
 何故か彼女のこめかみからピシッと音がした。整備不良かもしれない。
「そ、そ、その必要はありません!」
「そうか、なら俺だけご馳走に……」
「ダメです!」
「え?」
「ダメったらダメです。そうだ、いいものがあるんです」
 話をそらされた気がする。でもメイドさんがドーナッツ出したのでそらされておくことにした。
「昨日引っ越してきたお隣さんに頂いたんですよ」
「どこのCMだよ……」
 しかしドーナッツはおいしかった。既に半分以上なかったけど。勿論サンドウィッチを食べた上でである。
 それにしてもこのクソボロアパートに引っ越してくるとは余程の物好きか生活に困ってる人なんだろう。
「後でお返ししないとね」
「それなら大丈夫ですよ」
 メイドさん何故か自信たっぷりである。なんとなく不安に感じた。
「もうお返ししたの?」
「はい」
「何を?」
 そんなものすぐに準備できたのだろうか。
「ご主人様の使用済み下着です」
「…………は?」
 予想の斜め上を行く回答。
「ごめん。よく聞こえなかったんだけど」
「ですから、ご主人様のパンツとシャツを差し上げたのです」
「………………

なんてもん渡してんじゃあああい!」
 ドーナッツもらって代わりに自分の下着渡すとかどこの変態だよ! しかも初対面! 俺に至ってはまだ会ってもいないよ!? どこの変態だよ!
「恥ずかしくて死ねる……」
 このメイドさん「なにもないですが……」とか言って笑顔で俺の下着渡したに違いない。
 今度会ったときどんな顔して会えばいいんだよ……。うわあああああマジ黒歴史だ。
「ちょっとガチで謝ってくる」
「ガチムチで?」
「ちげえよ! てかなに!? 隣の人男なの!?」
「いえ、女の人…………だと思います」
「自信なさげ!?」
「でも大丈夫だと思いますよ」
「その自信はいったいどこから?」
 もう泣きたかった。
 でもメイドさんは余裕の表情で、
「だってその方、喜んでましたから」
なんて言いやがった。

「そっちが変態かあああああ!!」

「話を整理しよう。引っ越してきたのはいつなの?」
「昨日の午後ですね。改装工事してました」
 そんなことできるのだろうか。というかお金の無駄な気がする。
「隣に?」
「はい」
「どんな人だった?」
 メイドさんはしばし考え込んだ後、ぴったりの言葉を思いついたようである。
「ヤンデレですね!」
「あふぅ!」
 それが意味するところ。すなわち
男→ガチムチエンド
女→デットエンド
「な、なんてことだ……。ギャグ展開が一転、血なまぐさいか男臭い方向になるなんて……」
「天罰でしょう。今までが幸福すぎたんですよ。家に帰ると美人で可愛らしいメイドがいて、しかも幼なじみがいて、妹がいて、お姉さんがいるなんて。もうそろそろ死んでもおかしくないですね。むしろ死んでください」
「やめてくれ。まだ俺は生きたい……」
 本気で泣きそうになっているとメイドさんが優しく抱きしめてきた。甘い香りが鼻をくすぐる。そのまま頭をなでられて、少し落ち着いた。
「大丈夫です。どんなことがあってもわたしがご主人様を守ります」
「メイドさん……」
「だからご主人様はわたしだけを見ていてください」
 …………なんだろうこの台詞から漂うヤンデレな気配は。

 メイドさんがお返しを買ってきてくれた。しかし、袋の中を覗いてみると。
「バター、薄力粉、卵……?」
「今から手作りクッキーを作ります」
「おおっ」
 なんと頼もしい。…………と、同時に恐ろしい。
「あー、メイドさん。クッキーを作ったことは?」
「なぃです……けど」
「……」
 幼なじみに事情を話して手伝いに来てもらうことにした。


「……うっ、ご主人様ぁ。わたしには料理の才能がないのでしょうか……?」
 半べそ状態のメイドさんの頭をなでて、それから黒く汚れた顔を濡れタオルで拭く。
「今、幼なじみが来るからとりあえずそこに座って。俺が台所片付けるから」
 台所は戦場だったかのような有様だった。オーブンには暗黒物質。
 あれ、なんでこんなことになってるんだろ……。
 ぴんぽーん。幼なじみの登場である。


 幼なじみはクッキーに挫折したメイドさんを見てにやにやが止まらない様子だったが、台所に立つとテキパキと手順をこなし、クッキーはおいしそうな香りとともに完成した。
 渡す前に試食としてみんなで一枚ずつ食べてみた。
「こ、これは……」
 口に入れた瞬間、甘い香りが咥内に広まる。舌触りはなめらかでありながら、サクッとクッキーらしい触感がある。味はしつこくなく、あっさりと仕上がっている。
 つまり、
「うめぇ!」
 そういうと幼なじみは満足したみたいだった。
「よかった。いつでも作りに来てあげるからねっ!」
「助かったよ。ありがとうな」
 メイドさんはクッキーのおいしさを認めながらも「ぐぬぬ」といった表情であった。


 さて、途中でゴタゴタがあったが、隣の部屋のドアの前に到達。当初の予定より若干一名増えたが。
「ご主人様、安心して下さい。こちらにはM16アサルトライフルから手榴弾まであります」
「お前は何しにいくつもりだ……」
 メイドさんはアパートごと吹き飛ばす所存であります。
「むむ、また強大なライバルが一人増えるのね……」
 幼なじみも戦々恐々という感じ。
「よし、いくぞ」
 ぴんぽーん。
「「「…………」」」
 沈黙が場を支配した。
 しばらく待っていると、奥から「はーい」と、返事があった。女性の声。
「まだ油断はできません。男かもしれませんよ」
「あの声で男だったら引くしかない……」
「二重の意味でですか」
「…………」
 ドアが開く。中から現れたのは育ちの良さそうなとんでもない美人だった。彼女は黒髪のロングヘアーで深窓の佳人という言葉がぴったり当てはまる。このボロアパートには余りにも不似合いな存在だった。なにかが間違っている。
「突然すみません。昨日、ドーナッツ頂いた隣の「ああ、神様……ありがとう!」」
 抱きつかれた。
「「ぶほぁ!」」
 メイドさんと幼なじみが鳩がショットガンを食ったような顔をした。どんな顔かは想像に任せる。
「ちょ、ご主人様に何を!」
「嫌がってるでしょ、離しなさいよっ!」
 メイドさんの怪力によって引き離すことに成功される。メイドさん痛い痛い痛い。別に嫌がっているということはないんだけど幼なじみよこっそり腹をつねらないでくれ。
「わたしのこと覚えていますか?」
 隣人さんが俺をじっとみつめる。はて、こんな佳人を見た覚えは…………ある。
「ひょっとして、トラックの?」
「そうです。あの時はどうもありがとうございました」
「異議あり! 被告人は説明をしていません」
「異議を認めます。あんたは説明をして下さい」
 二人ともいつになく息がぴったりだ。
「ああ、それはだな「この方はわたしがトラックにひかれそうになっていたのを間一髪のところで飛び込み助けてくれたんです」」
 ……隣人さんに全部説明されてしまった。
 今回の自分には全く非がない。だから胸をはっていいはずなのだが、どうもメイドさんと幼なじみは不満げな顔をしている。
「ご主人様、またフラグ立てたんですか!?」
 え、なにその酷い言われよう。
「あんた、そのうち被害者の会とかできるわよ!」
 ホントに被告人になる!?
「ちょっと待て、俺は悪いことはしてないぞ」
「そんな偽善をのうのうと語るとは。これだからクラッシャーは……」
 あきれかえっている様子で辛辣な言葉を浴びせるメイドさん。
「ええ、存在自体が悪なのよ。存在悪よ。殺したくなるほどね」
 俺はなんて罪な存在なのだろう。およよ……って調子に乗りましたごめんなさい。そんな人を殺めるような目で見ないで。
 そこ、手榴弾を幼なじみに渡さないように。
 ここはスルーに限る。つっこんだら負けというやつだ。
「それでお返しにクッキーを焼いたのでどうぞ」
 クッキーを手渡す。なぜか手を握られる。
「どうぞ、あがって下さい」
 そのまま引き入れられるが、無理矢理離すわけにもいかないのでお邪魔させてもらうことにする。
「お二人もどうぞ」
 敵愾心バリバリだと予想していた二人だが、お隣さんのお誘いを断ることもできず部屋に上がることにした。
「な、なにこれ」
「同じ間取りとは思えません……」
「ここだけ世界がちがうわ……」
 入室した先にあったのは優美な空間だった。内装は完全に模様替えされ、染み一つない純白の壁に傷一つなさそうな真新しいフローリング。窓からは風がそよいできて白のカーテンがたなびいている。確かに広さこそ他の部屋同じであるが、それ以外の点において違いすぎた。
 ここ、隣なんだよね?
 しかし借りているのにこんなことして大丈夫なのか。というか一日でここまでって凄まじいな。
「大家さんには許可をもらっていますから大丈夫ですよ。正確にはアパートごと買い取らせてもらったんですけど」
「はい?」
「それじゃあ、わたしが大家さんですねっ」
 笑顔でさらりとそんなことを言ってのける。
 大家のおばちゃんがしめしめと大金を懐に入れている様子が簡単にイメージできた。
「そ、そんなのって有り!?」
 勝てない、そう悟った幼なじみがへなへなとヘたりこむ。
「ここにきて金持ちキャラの登場とは…………将来的には旅行イベントが……」
 メイドさんはなんかブツブツ言っているようだ。顔が若干にやけているので放っておく。
「どうしてこんなところに引っ越してきたんですか?」
 俺は疑問を口にした。
「あの後、あなたを探したんです。そしてようやく此処に住んでいるということを知ったんですが、もういてもたってもいられなくてここに引っ越してきちゃいました」
「でもお金持ちの割にメイドがいませんね」
 メイドさん話をぶったぎる。そして内容も失礼極まりない。
「呼びましょうか?」
「いえ、結構です」
 断るんだ……。
 今日の目的はもう一つある。メイドさんが渡したという下着を回収すること。
「俺の下着は……」
 答えはすぐに返ってきた。
「あげませんっ」
「…………そうですか」
 一見普通の人に見えるが、メイドさんの情報しかり、ボロアパートを買って住むなど、尋常ではない。
「あんた、気をつけた方がいいわよ」
 幼なじみも小声で警告を送ってくる。
 その後俺たちはイスに座わらせてもらい、隣人さんが紅茶をいれるのを待っている。メイドさんがやろうかと申し出たがお客様として迎えているからと言って断られた。
「ご主人様」
 隣の席から小声で話しかけてくるメイドさん。
「どうした?」
 普通の音量で返事をすると人差し指を口に当てて静かにするように促してきた。
「そこの西洋画の裏が怪しいです」
「怪しいって?」
「いいからめくってみて下さい」
 むむ、他人の家のものを勝手にいじくるのは抵抗があるが好奇心でめくってみる。
 ちらっ。
「……」
「どうです?」
「ん? なにもなかったよ?」
「「ダウト!!」」
 何ゲーだよ!? てか当たってるし!? そして声が大きいよ!
 しかたがないのでめくることにする。
 俺がいた。メイドさんもいた。つまり写真が壁に貼り付けられていた。俺らはターゲットかなにかなのか。
「これはかなり末期よ」
「ええ、キてますね。ステージ4ですか」
 3人ともどん引きである。
「アラ、見テシマッタヨウデスネ」
 空気が凍った。カタカナ怖いカタカナ怖い。
 隣人さんは張り付いたような笑顔をしている。今はもう不気味にしか見えない。そのちいさな口から次にどんな言葉が発せられるのか身構える。3人は息を飲んだ。
「よろしければ差し上げましょうか?」
 メイドさんと幼なじみは立ち上がる。
「「もらった!」」
「ちょ、異議あり! その反応はおかしい!」
「「異議を却下します!」」
 シンクロしすぎ……。
 メイドさんは冷静に解説する。
「彼女はトラックにはひかれませんでしたが、あなたに惹かれてしまったようです」
 この局面でうまいこと言ってんじゃねえぞ!!
「それで、いったいこの写真はどういうことなんです?」
 俺は撮られた覚えはないしそれはメイドさんだって同様だろう。
「そうですね、まあ大家として住民の行動は把握しておきたいじゃないですか」
「職権乱用すぎる!」
 なんか違うけど。大家になったの昨日だよね!? 写真明らかに昨日撮ったどころじゃないよね!?
「いいんですか~? そんなこと言って。先月の支払いがまだらしいですね」
 そこを突かれると俺には反撃の余地が……って、そういう問題ではない!
「でも、下着をもう1セットくだされば忘れてもいいです」
 へ、変態すぎる!
 このご令嬢、見た目こそ美しい良家の子女だが、いま何て言った? 「パンツくれ」だぞ?
「ご主人様、ここは渡しましょう。家賃のためです」
「新しいのを買えばいいだけじゃない!」
 とりあえずその手に握られている写真を渡せ! 説得力がないにも程があるぞ!
 しかし金がないのも事実。
「お、俺はイヤです! 今日は部屋に帰らせてもらう。家賃はちゃんと払います」
 母が振り込み忘れたのか。最悪アルバイトしてでも払ってやる。
「二人とも、帰るよ!」
「「どーぞ」」
 もう俺に味方はいないのか……。
「そうですか、残念です。でもあなたにプライベートはありませんよ」
「……?」
 なんという不敵な笑み。
「これがなんだかわかりますか?」
 隣人さんは鍵の束を取り出す。
「そ、それは……」
「「○○○ーキー!?」」
 そこ伏せる必要あった!? 逆になんかいかがわしいよ!?
「そうです。これでいつでもわたしはあなたの部屋に入ることができます。そうすれば下着だって……フフ」
「職権乱用!?」
 なんか合ってる気がする!
「もらった!」
 幼なじみがお隣さんから奪い取った。
「こら、返しなさい!」
 隣人さんのあの反応から見るにマスターキーはあれだけのようだ。
「俺にパスしろ!」
「やだ!」
「なんで!?」
「あたしのだもん!」
「いいから俺に渡せって!」
「やだ! もうピッキングとかサムターン回しとかしなくて済むもん」
「お前あとで絶対前科吐かせるからな!」
 思わず口が滑ってしまったらしい。隣人さん以上に危険な人物に渡ってしまった。
「甘い!」
「わっ!」
 メイドさんが縮地をつかった! 幼なじみは鍵をかすめ取られた!
「メイドさん。よくやった! パスだ!」
「嫌です!」
 俺に味方はいなかった。。。
「これはヤフオクに出します」
 そこは伏せ字にしろよ!?
「つか、そんなん売れないからな!?」
「…………なら、……ゴッドハンドク○ラッシャー!!!」
 クシャリと鍵が握りつぶされた。
「そういう技じゃねえからぁあああ!」
 ○に何が隠れてるんだぁあああああ!


 後日、○○○ーキーを普通に弁償したことは言うまでもない。
 でも黙って鍵を替えたのは秘☆密である。



おしまい




というわけで三題噺でなくなってしまったw

というかはっちゃけすぎたと思うw正直書き方忘れたしw

地の文頑張ります。「イスに座る」と「テーブルに座る」で迷った。「テーブルに座る」ってよく考えたらテーブルにすわってんじゃん!w(え?)日本語合ってると思うけどね

よかったらコメントよろ~

というかドーナッツあれ引っ越し業者にあげてるんであってお隣さんとかにあげてるわけじゃなくね!?
ガッテム!!wwww


って思ったらお隣にあげてるやつもあるみたいでセーフ!!w
オリジナルSS「めっ!」シリーズ | コメント:6 | トラックバック:0 |

めっ! 第八話 「いちご」「湖」「干物」

 冬の夜。悪夢は突然始まった。そう、あの電話がきっかけとなる。
 ジリリリリリリリリリリリリリリリ。
「んあ~、電話か……誰だよ。夜中の3時だぞ……」
「…………む、わたしが出ましょう」
「俺が出るからいいよ」
 パジャマ姿のメイドさんがガラっと襖を開けて出てきた。彼女は毎日押入の中で寝起きしている。そんなどこかの猫型ロボットみたいなことを女の子にはさせられないともちろん最初は俺も反対したのであるが、メイドさんはどうにも頑固一徹なので、結局押し切られてしまった。最近知ったのだが、どうも押入の中で朝までゲームをしているらしい。流石ロボットなだけはあるというか、本当にどうしようもないゲーマーだった。それでもパジャマに着替えて布団に入るのは俺がせめて人間らしい生活を……と指示したからである。決して、邪な気持ちなどでは、ないのだ! たぶん! ちなみにパジャマはクソジジイから送られてきたイチゴ柄のちょうど小学生が着るようなやつをでっかくしたようなもので、当初俺は買い直した方がいいんじゃないかと提案したのだが「そんな畏れ多いことはできません」と頑なに否定されてしまい(案外気に入っているように見えた)、現在のパジャマに至る。ゲームは買え買えとせがむ割には変なところで謙虚だ。そしてそのパジャマのサイズがぴったりだったのがなんだか無性に非常に腹立たしいところである。クソジジイから送られて来た時点で捨てておけばよかった。ちなみに俺はというと……
「ご主人様、地の文が長いです」
「異議あり! メイドさんは妄想で地の文が長いと言っています」
「異議を却下します。被告人は電話を取ってください」
「俺被告なんだ……」
 しぶしぶ電話を取る。誰だよ本当に。こんな時間にかけてくる奴なんてろくな奴ではないに決まっているんだ。おそらく常識が欠如している。是非とも親の顔がみt……。
「もしもし」
『あ、わたしよわたし』
「母さん……………………!」
 親そのものかよ。
「そんなオレオレ詐欺まがいの電話してきてさらにこんな時間に何の用? 何かあったの?」
 こんな時間に家族に電話してこられると逆に心配である。もしや誰かにもしものことがあったとかそんな話ではないのかと気を揉む。
『実はお爺さんが……』
「えっ、クソジジイが……?」
「お爺さまがどうかなさったのですか!?」
 クソジジイの単語に反応したらしく(なにか気に食わない)、部屋の電気を点けたメイドさんがぱたぱたと走ってきて隣にスライディング正座し、俺の受話器に耳を寄せて来る。メイドさんの顔が受話器の反対側とはいえ、その白い肌が触れるんじゃないかと思うほど近くにある。心拍数は急上昇し、俺は電話にもメイドさんにもドキドキする羽目になった。
 しばらくの沈黙の後、俺は堪えきれなくなって、聞いた。
「クソジジイがどうしたんだ……」
『………………』
「おい、もしもし!?」
『……………………………………………………zzz』
「ねるなああああああああああ!!」
『……………………』
 こいつ、完全に寝てるぞ……。どうなってやがる。
「お母様はどうなさいました?」
 耳元で話すメイドさん。
「寝てるみたい」
「お疲れだったのでしょう」
「疲れてんなら電話するんじゃねえ! てか寝ぼけてんのか!?」
「お母様がどんな状況なのかわかりませんが、風邪を引かなければ良いのですが……」
「そうだな、なんとかして起こそう」
 なんで俺3時にこんなことしてんだろ……。悲しくなってきた。
「母さん起きろ!!」
『…………zzz』
 叫んでみたが効果はなし。ふむ、奥の手だ。
「……………………今なら限定メイド彫刻が付いてくる……」
『はっ!(起床)』
 この母親は割引とか限定とか先着何名とかいう言葉に滅法弱い、というか異常に反応する。コーラにメントス入れるレベルで反応する。
「起きたみたいだな……で、どうしたんだ」
『何の話だっけ?』
「クソジジイの話だよ」
『あ~、クソお爺さんの話ね~』
 なんかうつっちゃった!
 そんなことはいい。大事なのはクソジジイにいったい何が起きたのかということだ。
「それで、いったいどうしたの?」
『またロボット作ってるらしいのよね~』
「…………………………………………は?」
 なんだ、死なねえのか。つかそんなことで今電話するなよ……。
『こんどはお姉ちゃんに送るつもりらしくてね。それで、そういえばお姉ちゃんが存在するの忘れてたなぁ~って思って』
「存在を忘れてたの!?」
『実はあの娘は本当は私の子じゃないのよ……』
「この会話の流れで普通言うかそれ!!」
『嘘に決まってるじゃない。今日はエイプリルフールよっ!』
「設定は冬の夜って最初に書いてあるからな!! 勝手に変えるな!! そしてエイプリルフールでもそんな嘘はつくんじゃねえ! 俺だったら泣くぞ!」
『泣けば?』
「うわあぁぁあん!」
 泣いた。姉の分まで。
『今日はエイプリルフールにしたわ』
「自分ルール発動!?」
 それにしたって日付が変わって3時に嘘つくために電話するなんて並の嘘つきではなかった。
『じゃあ私の代わりにお姉ちゃんの様子見てきてねー』
「それどっちかって言うとあんたの役目だろ!」
『私は今から寝るので忙しいからね』
「なに!? 今から行けってこと!?」
『行きたくないの? メイドさんと同棲してることクラスのみんなにバラすわよ?』
「怖ええええ! 母親マジ怖ええええええええええ!!!」
『ま、元気にしてるかどうか見てくれればいいから。明日……と言っても今日だけど、起きたら行ってみなさい』
「へいへい」
『へいは一回!』
「へい!」
 変な会話だった。
 果たしてこの時間に掛けた意味がどこにあったのだろうか。逆ホームシック? 時差? 脳神経外科?
 電話を切って、再び寝ようと振り返ってみると、メイドさんがニヤニヤしながら俺の布団の上で悶えていた。大丈夫かこいつ……。
「悪いが俺は寝るぞ……そこ退いてくれ」
「えへへへ」
「…………顔面の筋肉が弛緩してるぞ。故障か」
「違いますよ。お母様を起こそうとするとき、メイドの彫刻がどうのこうのって仰りましたよね? それって、わたしを意識してるからですよね。もぉ~照れちゃうなぁ~」
「いや、あれは世間一般に言うメイドのことだから。今そこにいる特定のメイドを指して言ったわけではない」
「そうですか……」
 しっしっ、とメイドさんを布団から退かして安眠タイムに入ろうとする。
「でも同棲って単語は否定しませんでした」
「ぶはっ!」
 こいつそこまで聞いていたのか! 痛いところを突かれたような気がした。何だか否定しなかったことが大きな誤りだったような気がする一方で、誤りではないと考える自分がいる恥ずかしさに、布団を引っ張って顔を隠す。
「おやすみなさい。ツンデレのご主人様……」
「うっせ! おやすみ!!」


 翌朝。メイドさんにいつものごとく叩き起こされることになる。
 俺が寝ている布団の端っこをつかみ、その華奢な体つきからは信じられないような馬力でもって、持ち上げる。
「おはようござい…………ます!!!」
 俺の体は空中に投げ出され、華麗に横に3回転半し……
「だぼぉ!?」
 顔面から地面に叩きつけられる。
「目は覚めました?」
「イヤでも覚めるわ!」
「駄目みたいですね」
「何が!? ちゃんと目覚めたよ!」
「いいえ、あなたは恋に目覚めていません……」
「うまいこと言ってもなんにもないからな!?」
 どや顔だった。
 そんなこんなで朝食を食べ、身支度をして、姉さんのところに向かうことにする。
「じゃ、行ってくるわ」
「はい、行きましょう!」
 目の前にはそう高らかと宣言し、行く気満々で荷物も抱えたメイドさん。
「…………え?」
「……なんですか?」
「メイドさん……来るの?」
「もちのろんです!」
 こんなにもさも当然のように言われると頷きたくなるところではあるが、いかんせんもし俺にメイドさんが付いてきたら姉さんに何を言われるか分からない。
「いや、留守番しててくれればいいよ。積みゲーあるでしょ?」
 あえて仕事とは言わない。
「嫌です。積みゲーはとっくに消化しました」
「……あんまり来ない方がいいと思うんだけど」
「もしかして、わたしが付いて行くとお邪魔なのですか…………?」
 目を伏せてしょんぼりされる。そんなあからさまに落ち込まれると弱ってしまう。しかし、ここは心を鬼にして……。
「いや、そんなことはないよ……」
 言っちゃったあ゛あ゛ぁぁ。
「ではどうか私を連れていって頂けませんか……」
 何だろうこの断ることに対するとてつもない罪悪感は。メイドさんの神に懇願するような顔を直視することができない。まるで俺が虐めているように思ってしまう。よくよく考えてみるといっつも丸め込まれている気がするのだが……。
「わかったよ。じゃあ一緒に行こう」
「っしゃああああ!!」
「………………」
 ……見なかったことにしよう。


 電車に揺られて1時間。湖を越えたところに姉さんの家はある。山をいくつか越える車窓からの景色は、写真に収めたくなるほどの絶景だ。ちなみに、メイド服で出かけようとしていた彼女だが、流石にそれはこっちが恥ずかし過ぎるので、着替えてもらおうとした。しかし、「メイドでなければ私ではありません! 私のアイデンティティを奪わないで下さい!」と言って、どうしても嫌だと聞かず、仕方なくメイド服の上にダッフルコートを羽織ってもらうよく分からないが少しはましな格好で出かけた。
「メイドさん、見てみろって。綺麗だぞ」
「今いいところなんでちょっと話しかけないでください」
「そうですか…………」
 彼女は携帯ゲームに夢中だった。なんだか悲しい。育て方を間違えた親の気分。
「一つ忠告しておこう」
 メイドさんはゲームをぴこぴこやっている。
「…………」
「姉さんは変人だ!」
「へぇ…………そうですか」
 ぴこぴこ。
「……くそぉ」
 俺めっちゃぞんざいに扱われてる……。
 俺<<<越えられない壁<<<ゲーム、の構図が悲しい!
 ていうか積みゲーなかったんじゃねえのかよ!
「ぷぷっ。今日はエイドリアンスーティルですよ」
「それを言うならエイプリルフー……ちげぇよ! いいからゲームやってろ!」
 メイドさんはF1ゲームをしていたことが判明。


 駅に到着し、しばらくしばらくしばらく歩くと目的地に到着した。道中メイドさんがへたりこんだが、お菓子をあげたら付いてきた。幼稚園児以下の単純さだ。転々と住居を変えることに加えて、何回かしか来たことがないので迷いそうになったけど、意外となんとかなるものだ。
「ここが姉さんの家だ」
「………………意外と普通……ではないですね」
 ひっそりとした山の中に背景と一体化して聳えるのは武家屋敷。築何年なのか不明の老朽化著しい寂れた家ではあるが、手入れが行き届いている。
「インターフォンは?」
「んなもんない」
「チャイムは?」
「ない」
 メイドさんはあきらめたようで声で訪ねることにする。
「そうですか……ごめんくださーい」
 返事はなく、静まり返った屋敷の中からは物音一つしない。鳥の鳴き声や葉の風に揺れる音だけが場を支配している。
「ごめんくださーい」
 メイドさんは再度試みるが、人のいる気配はない。
「留守みたいですね」
「いや、やつは居る……」
「どうするんです?」
「こうする」
 俺は恥ずかしさを押し殺し、決意を固めた。ガンガンと引き戸を叩く。そして一言。
「たのもーー!」
 すると中で何者かが動く気配。戸が引かれ、中からすっと武士が現れる。一触即発という表現がしっくりくるようなキリッと緊張した面もちであったが、俺の顔を確認すると、力を抜いた。
「おお、よくぞ参った。我が愚弟よ」
「その呼び方なんとかならないの……?」
 姉の登場。


 居間に通されると、お茶と和菓子を出してもらった。
「今日は何用で?」
「姉さんが元気でやっているか見にきた。母さんが心配してたぞ。たまには連絡を入れてあげろよ」
 心配してたかどうかは不明だが。
「ふむ、母上の存在を忘れておった」
「お前も存在ごと忘れてたのかよ!」
 あの母にしてこの娘ありというか……。
「そちらの方は?」
 姉さんの疑問にメイドさんが即答する。
「メイドです」
「はて、冥途……冥土……姪奴……」
 なんか漢字が危ないよ!?
「外土の方か?」
「ガイドではなく、メイドです!」
「なんか噛み合ってないよ!」
「ようわからぬ……」
 やはり俺が仲介役になったほうがいいだろうと思い、説明することにした。メイドさんは友達で偶然一緒に来ることになった、という設定とかにしておいてくれればよかったものを……。もう言ってしまったものは仕方がないので、正直に話すことにする。
「メイドっていうのはお手伝いさんのことだよ」
「そうです。召使いです!」
 おい! せっかく「お手伝いさん」という柔らかい表現をしたのになぜこいつは状況を悪化させようとするんだ!
「雌使い……なんて破廉恥な!」
「何故かさらに悪化したああああ!!」
「愚弟よ、まさか貴様一つ屋根の下に住んでなどはおらぬだろうな」
 キッっと鋭い視線が俺を貫通する。もし頷きなどしたら、腰にある日本刀で俺は斬首されること間違いなし。連続殺人犯を斬り殺したとか、道場破りした数が3桁に達したとか、海を斬ったとか色々な噂話が絶えない《歩く銃刀法違反》にまた新たな伝説が加わることになる。
「まあ、ご主人様が斬り伏せられたところで噂になるほどのことではないですね」
「もっともだが悲しい!」
「ええい、どうなのだ!」
 痺れを切らした姉さんが押し迫る。
「わたしは、メイドです。ご主人様と一緒に暮らすのは権r……役目として自然なことです!」
 姉さんの目が見開かれる。
「リア充は殺すっ!!!!!」
 なんでメイドは知らないくせにリア充知ってんだこいつは! とかつっこむ暇もなく刹那の速さで日本刀が振られる。俺に!!!
「斬捨御免!」
「ええぇぇえええ!」
「ご主人様っ!」
 俺はメイドさんに突き飛ばされる。そして、振り向きざまに襲いかかる日本刀を膝と肘の間に挟むようにして圧壊し、一撃を封じた。
「なにっ……!」
 折れた刃先が宙を舞う。そして尚も二人は日本刀を離そうとしない。
「おぬし、ただのメイドではないな……」
 ふっ、と不敵な笑みで応えるメイドさん。なにこれ……。
「わたしはメイドロボです。ちゃんと第一話読んでください」
「……。いいだろう。決着はまた今度だ」
 メイドさんは力を緩め、姉さんは折れた刀を鞘に納める。
「ご主人様、もう大丈夫ですよ……あ……」
 俺は壁に上半身が刺さっていた。


「どうもクソジジイが姉さんにこのメイドさんみたいなロボットつくってるらしい。断るなら早くしたほうがいいぞ」
「ほう、悪い話ではないな。先ほどの戦闘力。自身を鍛えるのに使えるやもしれぬ」
「ならいいんだけど。それよりなんでリア充なんて知ってたわけ?」
「御爺様に伝授されたのだ。リア充は殺さねばならないとな」
 クソジジイのやつ孫を殺戮兵器にするつもりか……。というか俺が死にかけたわ。そのうち爆殺兵器でも作るんじゃないだろうか。
「とりあえず御爺様を斬っておいた」
「ええええええええええ!?」
「冗談だ。今日はえいぷりるふーるだぞ」
「設定(笑)!?」
 ていうかクソジジイがリア充ということに絶望した!
「それより、幼なじみとはどうなのだ?」
「なにが?」
「そのメイド、かなりの美人ではないか。同居しているとなれば幼なじみがきっとやきもきしているに違いない」
「そう? 美人度で言えば二人より姉さんの方が上だと思うけど」
 あーまずい、隣から殺気がぷんぷんする。しかしながら、メイドさんは美しいというよりは可愛いのほうが合っていると言える。クソジジイの趣味というのが気に食わないところではあるが。
「な……な、なにをいふのだ!?」
 姉さんの顔が赤くなった。もしかして怒らせてしまったたのだろうか。殺られるかも。
「そうですよ! こんな女より武士道を取ったような人にわたしが負けるなんて! ご主人様のような干物男にはわたしがいなければダメです!」
 メイドさんもよくわからないが必死だ。なんだ干物男って……。
「こ、こんなとは失敬な! わしだってだな、いちおう、すこしはじしんが、あるのだぞ」
 しどろもどろになりつつ強がる姉さんからはなんだかいつもの威厳が失われている。
 失敗した気がする。ここは話を戻すことにしよう。
「で、メイドさんが住むとなんで幼なじみがやきもきするの?」
「…………」
「…………」
 あれ? ……。
「ご主人様……」
「愚かな弟だ……」
 なんか哀れまれてる!?
 咳払いをした後、姉さんが仕切り直す。
「愚弟の幼なじみが訪ねてきてな、掃除から料理まで何から何までしてもろうた。そこで、愚弟との婚姻についても快諾した」
「なんか根回ししてるううううう!?」
 着々と不穏な計画が進行してるよ!? なに!? あいつなんか怖いよ!?
「馬鹿なっ。先を越された!? 計画に修正が必要ですね」
 なんかメイドさんからも怪しい気配がするよ!?
 メイドさんは歯をぎりぎりとしているように見える。虫歯か?
「それで、どうなのだ?」
「どうって?」
「幼なじみと婚姻するのであろう?」
「ご主人様、そんなことありませんよねっ」
「俺は別に、あいつに特別な感情を抱いているわけではないよ?」
「ほぉ」
「よし!」
 ガタッ。
 姉さんが相槌を打つのと、メイドさんが意気込むのと、天井裏から物音がしたのは、ほぼ同時だった。
「なあ、何か聞こえたんだけど」
「ふむ、曲者がいるな」
「泥棒猫の気配がします」
 三人とも立ち上がって天井を見上げる。
「曲者ならば、新しい日本刀《雨正(サメマサ)》の初陣にはちょうど良い」
 この人、目がマジだ。よく見てみると刀が先程とは異なるものに変わっている。天井ごと切り刻みかねない。
「ちょっと待って、猫かもしれないよ」
『にゃ~』
「ほら、やっぱり猫じゃないか……、、、、、なんか聞き覚えあるな……」
「わたしもです」
「奇遇だの」
 どうも、幼い頃から十何年も慣れ親しんだ声のような気がする。
『気のせいだニャ~』
「「「………………」」」
 猫の線は消えた。
「テヤァ!」
 姉さんが鞘に手を当てた。すると天井が丸く切り取られる。どこの姉右衛門だというスピードである。さっきよりレベルあがってね?
 ずどっ。ごてっ。
「っっ痛うぅ……」
 やはりというか、目の前に現れたのは頭をぶつけて悶絶している幼なじみ。こんなとこでなにしてんだ……。梯子で現れたりホント無茶苦茶な登場の仕方をする。
「おお、やはり義妹であったか。怪我はないか? 先刻はなにをしておったのだ?」
 この人こんなこと言ってますけどさっき殺そうとしてまいたからねっ!
 幼なじみは俺の顔を見るなり真っ赤になって、正座で縮こまってしまった。
「あ、あの、その……」
「泥棒猫ですからね。盗み聞きしていたのでしょう。気持ちはわかります」
 何故!?
「そうだのぅ。もう少し上手くやっていれば愚弟も気付かなかったろうに」
 何故か二人とも同情的!?
「何してたの?」
「……あ、あんたのことが気になって……でも、そしたら……ぐすっ」
 顔が赤くなっていたと思ったら、目も赤くなっている。
「あー、ご主人様泣かせたー」
 どこぞの中学生だというイントネーションで俺を責めるメイドさん。やめろ!!
「え? え? ちょっと待って! どうして!?」
 天井から幼なじみが落ちてきました。泣きました。…………意味が分からん!
「斬首か切腹か辻切か選ぶのだ」
 生存フラグが皆無なことに俺が泣きたかった。俺の解体ショーはっじまっるよ!
 どうして泣いているのか考えてみると、恐らく天井から物音が聞こえる前の会話が原因なんじゃないかと思い至る。
「さっきの言葉、気にしてるのか?」
「……」
 泣きながら俯いたままになっている幼なじみはあまりにも可哀想で見ていられない。
「ごめんな。特別な感情を持ってないってのは、本当のことだ。でも、それほどまでにお前のことを身近に感じているんだ。小さい頃からいっつも一緒だったからね」
「まずいご主人様がイケメンに!」
 ぎゃーぎゃーうるさいメイドさんは無視する。
「どうか俺を嫌いにならないで欲しい。これからも、俺のそばにいてくれないか?」
「…………」
 幼なじみの濡れた頬をハンカチでぬぐってやる。彼女はしばらく瞳を見つめると、
「…………はい」
と答えた。
 不覚にもドキっとした。どうやら元気になったようである。よかったよかった。
「しかしお前の猫の声真似なんて初めて聞いたよ。もう1回やってくれない?」
「も、もうやらないっ!」
「俺いぬの真似するからさ」
「……やらないったらやらないのっ!」
 ちょっと迷ったぞこの娘。
 そんな雑談をしていると後ろから視線が突き刺さって貫通した。
「さて、帰って母さんに電話で報告するかぁ」
「さて、ご主人様を殺しますかぁ」
「さて、リア充を爆☆殺するかのぉ」
「…………」
 今日はエイプリルフールだよねっ! …………ごめん母さん、きっと帰れない。




おしまい




久々のPC更新です! 年越える前に出来たぜ! というか終わらせた

ダッフルコートはヒトメボレLOVERの長門おおおおおおw

干物苦し過ぎるw

約8500字でこのシリーズ最長のくせに出来がorz

だが次の話は既に考え始めている。懲りないw

来年も頑張って書きます! たぶん

というわけで姉回? でしたー。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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めっ! 第七話 「朝焼け」「花火」「落書き」

 今日は日曜日。俺は安らかな二度寝を敢行していた。ああ素晴らしき二度寝。君はどうして二度寝なんだい?
 メイドさんが起こさないのか、いや、心配は無用。今日彼女は師匠(妹)の元に修行(ゲームしに遊び)に行っているおかげで、朝からあの厄介な目覚まし時計はいないのである。もちろん朝焼けが見られるくらいの早朝に俺を撲殺せん勢いで叩き起こしたのだが(二度寝どころか永眠しかけた)。メイドさんが出ていった後、布団をひき直し、今に至るわけである。
 趣味は寝ること。と言えるかのような毎回の冒頭陳述だが、そんなことはいっこうにかまわん!
 ねるっ!
 ピンポーン。
 ほぼ同時だった。
「ふっ。居留守3段の保有者である俺様が、そのようなチャイムに屈するはずがなかろう……」
 ピンポーン。
 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポ
「どんだけ会いたいんだよ……」
 迷惑極まりなかった。
 それでもしばらく我慢していると、チャイムがやっと止んだ。
「おれは……勝ったのか……?」
 階段を何者かが降りてゆく音がする。どうやら敵襲は終わったようだ。寝ることも出来なかった俺は、ほっと一息つく。新聞か、はたまた宗教か、そんなことを考えながら布団に潜る。
 ガゴッ。
 何かがぶつかって引っかかったような変な音がした。しかもドアの方からではなく、窓の方から。
「ん?」
 振り返ると幼なじみが梯子を登ってきていた。どうやらベランダに梯子をひっかけたらしい。
「お邪魔しまーす」
「うおおおおおおおい!?」
 お邪魔すぎる!
「おはようっ! 元気?」
「元気だけど……」
 お前ほどじゃねえよ……。
 そう返事を返すと一転、彼女は説教モードに入る。そういうメイドさんっぽいところはなんとかならないのだろうか。梯子を登りきってベランダに着地。
「やっぱり居留守だったのね」
 溜息を吐く。そんな仕草も絵になっているのが悔しいところだ。
「そんなことしていいと思ってるの?」
「思ってるよ! 少なくとも窓から侵入する奴よりかはマシだよ!?」
 どうして俺は窓からやっててきたこいつに説教されているんだろうか……。
「今日は何しに来たんだよ。俺は二度寝の続きをしたいところなんだ」
「それって二度寝じゃないんじゃないの?」
「言うな!」
「今日はね、花火の誘いに来たのよ」
「……だが断る」
 俺は音速でピシッと窓を閉めて、鍵を閉める。自然、彼女は一人ベランダに取り残される形になる。コンコルドもびっくり。
「ちょっと!? 何で閉めるの!?」
「俺が、音速の貴公子だからさ……」
「………………頭大丈夫?」
 くそう、こいつにだけは言われたくなかった気がする。
「じゃあ聞くが、どうしてこの時期に花火なんだよ」
 今はもう秋もまっただ中である。こんな時期に花火なんて、俳人がいたらブチキレるぞ。季節には季節にあったものがあるだろうに。花火が季語かどうかは知らないが!
「そりゃあ特売してたからよ!」
「花火って特売とかあるの!? というかお前買っちゃったの?」
「うん……」
「…………」
 なんというか。哀れなウサギみたいな表情をしていたので見ていたこっちが居たたまれなくなってしまった。ごめん……。
 俺が窓の鍵を開けると彼女はそっと入ってきた。
「男の子の部屋に入るのって、その、少しどきどきするわね……」
「いっつも俺んち入ってんだろうが……」
 なんで心機一転してんだよ。素直に入れ。
「まあ、窓を破らなくてすんだのは良かったわ」
 さりげなく恐ろしいことを言う彼女であった。
「花火って言うけど、火薬とかまだ大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思う。ここで試してみる?」
「家がファイアーストームするからやめようか……」
 彼女が玄関を開けるとそこにはリュックサックと……大量の花火があった。
「それ全部花火?」
「……うん」
 買いすぎだろ……。
「メイドさんとか妹も呼んだ方がいいな。二人じゃ消化しきれないぞ」
「ダメ! ダメったらダメ! 絶対ダメ!」
「なんで?」
「……わたしが……あんたと楽しむために買ったんだから…………とにかくダメなのっ!」
「はぁ、でも放っておいてもメイドさんは帰ってくるぞ」
 妹とのゲームが終わったら帰ってきてしまうだろう。二人で花火というのも寂しいし、やっぱり人数は多い方がいいと思うんだが。
「大丈夫よ。あのメイド今日は帰ってこないわ」
 何故か自信満々でそう言う彼女を俺は疑問に思う。
「どうして?」
「お義母さんがあのメイドを泊めるように手はずを整えたから」
「母さんなにしてんだ……」
 電話か何かで情報が漏洩したに違いない。この計画はいつから立てられていたのだろうか。おそるべし母。
「だから今日のあんたはわたしのものなんだからっ!」
「え……」
 なんかとてつもなく恥ずかしいこと言われた気がする。
「もしかしてあのメイドがいないと寂しいの!?」
「そういうわけじゃないけど」
 でも寂しくないかと言われれば寂しくないことはないのだ。俺の中のメイドさんはそんな感じの位置づけになってしまっている。
「そういうと思ってちゃんとメイド服だって準備してきたのよ」
「………………じゃあ俺は二度寝するから夜になったら起こしてくれ」
 長くなりそう……。というか幼なじみのメイド服姿を想像して無性に恥ずかしくなったのでここいらでログアウトさせてもらうことにする。
「寝るな~~」
 ぽかぽか叩いてくる幼なじみ。もしメイドさんだったら俺を瀕死状態にするくらいのことをしそうだ。それを思うと幼なじみのなんて甘いこと。この分だとぐっすり眠れそうだ。
 布団に潜ってしばらくたつと、幼なじみの攻撃も止み、沈黙が流れた。俺はいつの間にか睡魔に負けて眠っていた。

            ◇

 ぐすっ。
 ちょっとまて、なんか非常に不味い刺激が聴覚に響いてない? すすり泣きの声が聞こえてきたんですが!?
「うっ。喜んでくれると思ったのに……。花火だって今年はまだしてなかったから頑張って探したのに……。ぐすっ」
 慌てて被っていた毛布を取り去ると、やっぱりというか、彼女は泣きぐずっていた。
「悪かった。俺が悪かった。花火でも何でもやるから! ごめんな」
「ほんとに……?」
 正直言って、いつの間にかメイド服に着替えていた幼なじみはとっても可愛かった。ていうかいつの間に着替えたんだ……。
「本当だ。お願いだから泣かないで。お前に泣かれると昔からどうしたらいいかわからなくなっちまうんだ」
 彼女は小さな頃から気丈なようだが脆い部分があった。取って付けたような設定だが、今作ったのだから仕方がない。
 周りは夕焼けに染まり、すでに月が見える時間帯となっていた。部屋にも西日が差し込んでいる。どうも二度寝の予定が一日中眠ってしまっていたらしい。彼女は俺の部屋にせっかく遊びに来たのに、一日中一人で過ごしていたようだ。そう思うと罪悪感にさいなまれる。
「じゃあ花火いこ」
 俺の後悔を吹き飛ばすように彼女は言う。はじけるような笑顔が夕日に輝いてまぶしかった。元気が戻ったようで良かった。
 幼なじみが洋服に着替えるのを外で待った後、俺と彼女は河川敷まで走った。というか走らされた。何でもやるなんて言うんじゃなかったなぁ。彼女は身軽に走り、俺はリュックサックの重さに体が軋んだ。帰りまで体が持つかわからなかったが、とにかく走る。
「はやくー」
 気が付くとかなり離されていた。はええ……。
「……ちょっと……待て……」
 酸素が足りない。普段部屋に引き籠もってるやつにこの運動はきついですって。つうか歩いて良かっただろ! なんで走るんだよ……。

            ◇

 河川敷に到着するとちょうど日が暮れた。橋の明かりを頼りに花火を開始する。
 リュックサックを開いてみて驚く。設置型の花火ばかりだった。
「じゃあ火付けて」
「俺?」
「何でもやるって言ったでしょ」
「そりゃ言ったけど、お前は付けないの?」
 二人でガンガン付けないと消化しきれないと思うんだが。
「わ、わたしはいいの!」
「ふーん」
 もしかして怖いのかもしれない。設置型の花火に火を付けるのは少し勇気がいるのだ。花火がいつ吹き出すかわからない。だからもしかしたら幼なじみは怖がっているのかもしれない。
「お前、怖いんだろ」
「怖くなんてない! ただ面倒なだけ!」
「じゃあ交代でやろう」
「ダメ! み、水汲んでくるからっ!」
 彼女はバケツを持って走り去ってしまった。というか逃げられた。仕方がないので、彼女の到着を待って花火を開始することにした。
 シューと、赤い火が吹き出す。色はやがて緑や青に変わり、その周りでバチバチと光がはじけている。
「綺麗……」
「ちょっと寒いけど、やっぱり花火はいいな」
「次これね。その次はこれ」
「はいはい」
 彼女の指示に従って俺は火を付ける。これまでも何度も花火を見てきたが、花火には人を飽きさせない魅力がある。俺たちは時間を忘れて楽しんだ。

「これで最後ね」
「これやっぱり花火だったのか……」
 リュックサックに入っていた巨大な筒状のなにか。一番でかかったそいつはどでかい花火であった。
「いくぞ」
 火を付けると輝く光が飛び出した。噴水というより滝と言った方が的確だろうその巨大さは、俺たちの花火大会の終わりを見事に飾ってくれたといえる。
「来年は夏にやろうね」
「そうだな。今度はみんなでやろう」
「それはダメ」
「やっぱりダメなんだ……」
 火を付けるの大変だったんだぞ。

 俺たちはその後線香花火を楽しんで帰ることにした。
「じゃあ今日はあんたの家に泊まるから」
「それはダメ」
「ダメがダメ!」
「ダメがダメがダメ!」
「なんでも言うこと聞くんでしょ!」
「その有効期限は切れた!」
「しょうがないなぁ~」
 俺の説得が通じたのか、それっきりあっさりと引き下がった。
 幼なじみは満足げな笑みを浮かべて帰っていった。俺も疲れたので家に戻ってさっさと寝たいところだった。

 家の電気が付いている。メイドさんが帰ってきていたようだった。幼なじみが話していたのとは事情が違ったが、まあいい。ご飯もあるだろうし助かったといえる。
「ただいま」
 ドアを開け、玄関で靴を脱ごうとするとドドドドと背後からメイドさんが走ってきたのがわかった。
「いったい何をなさっていたのですか!? わたしはとってもとっても心配しましたよ! 殺します!」
 もう支離滅裂もいいとこだ。メイドさんかなりテンパっている。
「これからはご主人様にGPSを仕込まないとダメなようですね! ちゃんと書き置きくらいして頂かないと困ります! 殺します!」
「やっぱり殺すの!?」
「わなわなメイドになりますよ?」
「懐かしいネタきた!」
 般若みたいな顔をしていたメイドさんだったが。俺の顔を確認するといきなり吹き出した。
「ぶはっぁ!」
 なんか死にそうな吹き方……。
「なwんwでwすwかwその顔はwwww堕落ですwww」
 なんかすげぇバカにされてる気がする。
「ご主人様(笑)」
「やめろ!」
 俺は慌てて洗面所へ駆け込んだ。
「な……」
 鏡に映った俺の顔には落書きが書き込まれていた。額に「肉」がある定番はもちろんのこと、変なところに邪気眼があったり目はパンダみたいにされていた。
「あいつぅ……」
 どう考えても犯人はただ一人、幼なじみしかいない。今これに気が付くまで俺はずっと顔に落書きされた状態だったというのがなにより悔しい。あの感動を返せ! 寝ていた時に落書きされていたのか……。
 顔を洗ったが取れない。油性だこれ。
「メイドさん! 除光液だ!」
 俺は洗面所から叫ぶ。すると返事がくる。
「イヤです。面白いですから」
 なんというメイドだ。失職させるぞ! 懲戒免職にするぞ! しないけど! ゲームくらいは没収したくなった。
「どうしてもこれが欲しいですか?」
 そう言って洗面所に歩いてきた彼女の手には除光液。彼女の顔にはニヤニヤの表情。
「くれ!」
「お願いしますご主人様と言ってください」
「立場逆転!?」
 この台詞何回目だろう……。なんだかだんだんメイドさんに調教されてきた気がする。
「今日何をしていたか言えば許してあげましょう」
 許してもらうんだ……。
「今日は幼なじみと花火しに言ったんだよ。それだけ」
「あ!?」
 なにこのメイドさん超怖いんですけど! 正直に言ったのに。
「許すとは言いましたが除光液をあげるとは言ってませんよ」
 やりくちが893!?
 まさか除光液ひとつもらうのにこれほど大変な目に遭うとは書いた張本人も予期しなかっただろう………………。予期しなかったよな!?
「ますますあげたくなくなりました。そうですね。じゃあ簡単な問題を出すので答えてください。正解できたら除光液を差し上げます」
「よしこい!」
 と、落書き顔の俺。
「1+1=は?」
「…………………………………………」
 こ、この問題は……。
 伝説の問題……。
 素直に2といくべきなのか? はたまた田んぼの「田」なのか? まさかの11とか?
「ちなみに田んぼの「田」とか言う小学生的な回答は求められてないですよ?」
「なに!?」
 ならば答えは……。
「2!」
「ぶぶ~。残念!」
 ええ~~。
「この問題は二進数の問題なので正解は10でした~」
 ませた小学生的な解答だった。
「頼む。くれ!」
「しょうがないのであげましょう」
「おお!」
 そういうとメイドさんは除光液を高く掲げた。
「はい、あげました~~」
「うおおおおおいい!?」
 小学生に帰れ! 全力で回帰しろ!
 その日、俺が除光液で落書きを消せたのは日付が変わってからのことだった。


おしまい


できたのでうp
調べたら除光液は人体には有害らしいですね。代わりにオリーブオイルがいいとか。

花火は秋の季語らしいです。今は夏の季語になったとか。

気がつけば前回の倍以上の分量(文量)になってたw
花火のあたりとかギャグじゃなくなってるし。

そんなわけで幼なじみ回でした~!w
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めっ! 第六話

 秋雨前線の影響で、ここのところ雨が続いていた。そのせいで、俺はメイドさんと二人で部屋にいることが多い今日この頃である。
「ご主人様、対戦ゲームしましょうよ~~。二人の方が楽しいですよ?」
「……やだ」
 だってメイドさん何やっても強すぎるんだよ。師匠(妹)には勝てないようだけど、それでも俺はメイドさんとゲームをやると勝てないのだ。だから俺はロールプレイングをこうしてやっている。
 だがメイドさんにとっては暇で暇でしょうがないみたいだ。俺がゲームをやっているとむぅ~っと湿ったような視線が背中を刺す。ゲーム2時間交代という約束で交代したばっかりなのに……。
「そんな子どもみたいなことおっしゃって。ふふ、本当は負けるのが怖いんじゃないですか~?」
「うっ」
 図星だ。でも、それでも、俺は世界を救うために戦い続けなければならないのだ! レベル上げが少し面倒だが。
「ああ、怖いさ」
「やだ…かっこいい……」
「だからやだ!」
「ご主人様のけちー! けちー けちー……」
「自分でエコー付けなくていいよ……」
「ひまひまひまひまひまぁ」
 畳のうえをごろごろと転がり回るメイドさん。体全体を使って床掃除をしてくれているようだ。そんなメイドさんを尻目に、俺は世界を救う旅をするのである。もうすぐラスボスだ。レベル上げも順調に進んでいる。
「だが俺は、急にメイドさんといちゃつきたくなったのであった」
「はいそこ捏造しないでねー」
「これは捏造なんかじゃない。俺は心から、メイドさんのことが……」
「あきらめない!? てかなんか趣旨変わってない!?」
「さて、あきらめるのはどっちかな?」
 なにそのカッコいい悪役のセリフ。
 俺がそれでもやめないので、メイドさんはぶーぶー言って、ごろごろしてふてくされた。
「遊んでくれなきゃやだぁ」
 そもそも他に何か仕事とかないんだろうか。いっつもゲームばっかりしているわけだが正直メイドとしてどうなんだろう。
「えいっ」
 画面が消えた。メイドさんはコンセントを握っている。
「てへっ☆」
 ウインクが決まった。
「てへっ☆じゃねえだろおおおおお! 俺のレベル上げがあああ!」
 おわた☆
「ゲームにうつつを抜かしてはいけませんよ! 堕落です!」
「お前がそれ言うか……」
 さっき二時間やりこんでたぞ。
「ご主人様にはわたしがいるじゃないですか。なのにゲームばっかりして」
「メイドさん、ごめん、俺、間違ってたよ…………(感動)


とはならないからな!?」
 ちっ、と舌打ちが聞こえた。気のせい気のせい。
「俺がゲームするくらい我慢してくれよ……。ゲームじゃなかったら何して遊ぶって言うんだ?」
「さぁ?」
 なんだろう。お兄さん殺気が湧いてきたぞッ!☆
「冗談ですよ冗談~。そうですね~。バンドごっこしましょう」
 ごっこ……。発想が幼稚園児レベル。
「じゃあわたしギターやるんで、ご主人様は弦やってください」
「人ですらない!? てか楽器未満!?」
「じゃ~んじゃ~ん!じゃ~ん!」
 え、やるんだ……。
 じゃんじゃん言ってる時点で俺は不要だった。
「ほら、ご主人様もやって!」
 え~……。
「びよ~ん。びよ~ん……」
「ご主人様なめてますか!? わたしキレますよ? そんなに弦のやる気がない人わたし初めて見ましたよ!」
「経験者いるの!?」
「弦がなければ、ギターは弾けません。わたしには、ご主人様が必要不可欠なのです。それほど、わたしはご主人様をなくてはならない存在だと慕っているんです」
「…………」
 うまいこと言った。と、余韻に浸っているメイドさんを冷めた目で見つめる。
「あれ? 効かない? グッと来ませんでした?」
「……いや、だって……ねえ」
 ごっこだし。
 そもそもバンドごっこっていうのがなんで楽器ごっこになってるんだ。しかも俺楽器の一部だし。
「じゃあ漫才ごっこやりましょう」
「またごっこ!?」
「わたしつっこみやるんで、ご主人様はボケやってください」
「普通逆なんじゃ?」
 こうして観客のいない漫才が意味不明のまま始まった。
「秋も深まってきてそろそろ寒いどん!」
 何弁か知らないけどスルーする。
「そうだね~」
「ご主人様は去年、紅葉狩りには行きなさってん?」
「ああ、去年は幼なじみと一緒に行ったな……」

「なん! でや! ねん!」

 ごっ!
「ごぼばぶうううう!!」
 どんがらがっしゃん、と吹っ飛んだ。メイドさんの上段蹴りが炸裂し俺の体が押し入れにめり込む。
「……俺を、殺す気か……!?」
 今別につっこむとこじゃなかったよね!? つうか何故ツッコミで蹴ったんだこいつ!?
「上段ですよ上段~」
 絶対それ言いたかっただけだろ!
「それより今年の紅葉狩りは是非わたしと行きましょうね?」
「いや、今年は行かなくていいんじゃなイカ? 去年行ったことだし」

「(゚Д゚)」

「それに幼なじみがまた誘ってきてやっかいなことになりそうだし……」

「(゚Д゚)」

「…………」

「(゚Д゚)」

「お願いだからその顔やめて……。一緒に行くから」
「(*^-^*)」
 どうやら満足したみたいだった。
「じゃあわたしその時はサンドイッチ作りますね!」
「ああ……一番いいのを頼む」

おしまい


今回は「ギター」「我慢」「ツッコミ」だそうで


ネット繋がった!奇跡だw
俺の祈りが届いたみたいです

Q:パロディネタ増えてない? そんなパロディで大丈夫か?

A:大丈夫だ。問題ない。神は言っている、パロディを使えと――

パロディって兵器の名前っぽくないですか!? パロデー参式!みたいな
なんでもないです。むしろ犬の名前っぽい!?

というわけでパロディネタ増やしてみたよ。新たな試み!?

不評ならやめますw 改善点とかコメント下さればうれしいなぁ
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